はやおきアンちゃんのだいぼうけん

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ねぼすけアンちゃん

あさ7じに、しんしつのめざましどけいがなります。それからきっかり10分ご、ママがかいだんを「ドンドン!」と大きなおとを立ててのぼってきます。
「アンちゃん!ようちえんのバスがいってしまいますよ!おきなさい!」
アンちゃんはふとんをあたまからすっぽりとかぶります。
「だってアンちゃん、きのう、ようちえんで、おうたをいっぱいうたって、とってもつかれたんだもん」
ママはふとんからアンちゃんをひっぱりだします。
「だめだめ!もうおきるじかんです。つかれたんだったら、よる、はやくねなさい!」

アンちゃんははんぶんだけめをあけて、かいだんをおりながらなきごえをあげます。
「まだねむいよぉ!」
「ねぼすけアンこ、おはよう」
せんめんじょでおひげをそっているパパがアンちゃんにこえをかけました。
「おはよぉ~。でも、アンちゃんね、ほんとは、おやすみ、っていいたいの」

広島にすむアンちゃんの、朝はまいにちこんなかんじ。ママはまいあさプンプンおこっています。

いちばんにおきたよ

あるひ、アンちゃんは、ようちえんでいつもよりたっぷりはしりました。
それは、だいすきなゆみせんせいが、「きょうは、かけっこきょうそうをやりましょう」といったから。
アンちゃんは、はしるのがきらいだけど、ゆみせんせいが「アンちゃんも、がんばろう!」といってくれたので、いつもよりもいっぱい手をふって、いつもよりもいっぱい足をあげて、はやくはしれるように、いっぱいいっぱいがんばったのです。
だからアンちゃんは、そのひ、とってもつかれてしまって、ようちえんから帰ると、ごはんもたべずに、おふろもはいらずに、ゆうがたの5じにねむってしまいました。

「あぁ、よくねた!」

アンちゃんは、パチッとめがさめました。そして、ちょっとふあんになりました。『おきてもぜんぜんねむくないから、アンちゃんきょうは、いつもよりもうんとおそくまでねむっちゃったんじゃないかしら』
しんぱいになってとなりを見ると、パパとママがぐっすりねむっていました。
『やった!きょうは、アンちゃん、いちばんにおきれたよ!』と思って、アンちゃんはとけいをみてみました。
とけいのながいはりが12で、みじかいはりが7なら、アンちゃんのおきるじかん。とけいのながいはりは、10と11のあいだで、みじかいはりは3のちょっとうえのほうでした。
アンちゃんはなんじかわからなかったけど、『きっと7じよりもはやい朝にちがいない』ととてもうれしくなりました。

アンちゃんのぼうけん

『そうだ、アンちゃん、パパやママよりもさきにしたにおりて、2人をびっくりさせてみよう』アンちゃんは、そう思って、ぬいぐるみのクマちゃんをだっこして、しんしつからでていきました。ふたりをおこさないように、そっと、そ~っと。
1かいについたら、おへやはまっくら。アンちゃんはでんきのスイッチをいれて、カーテンをあけてみました。そして、とってもびっくりしました。朝のはずなのに、おそとはまっくら。『アンちゃん、夜におきちゃったのかしら?でも、夜なのに、アンちゃん、ねむくないんだけど』

「ねえ、クマちゃん、いまは朝なのかな?夜なのかな?」

アンちゃんはクマちゃんにたずねました。クマちゃんはニッコリわらっていたのでアンちゃんは『きっと、夜っぽい朝なんだ』と思いました。
ふとアンちゃんは、どこからかピタン、ピタンとおとがすることにきがつきました。
「なんだか雨みたいなおとがするね。クマちゃん、どこからおとがするのかさがしてみない?」アンちゃんはクマちゃんをだっこして、ピタンピタンのおとがなるほうへあるいていきました。

ピタンピタンは、おふろのじゃぐちからすいてきが、せんめんきへとおちているおとでした。
「すいどうさんも、おきてるのね。おはよう、アンちゃん、きょうははやおきなんだよ」
アンちゃんは、じゃぐちにあいさつしました。じゃぐちはへんじのかわりに、ピタンとすいてきをいってき、おとしました。
するととつぜん、「カチャ!ブイ~ン」というおとがして、アンちゃんはとびあがるくらいびっくりしました。
「ねぇクマちゃん、いまのおときいた?なんのおとか、みてみない?」
アンちゃんはそういって、こんどは「カチャ!ブイ~ン」のおとのなったほうへとあるいていきました。クマちゃんをぎゅっとだきしめて。

「カチャ!ブイ~ン」のおとは、キッチンからきこえてきました。すいはんきのスイッチがあおくひかっています。「カチャ!ブイ~ン」は、ママがタイマーをかけたすいはんきが、おこめをたきはじめたおとだったのです。
アンちゃんは、いつもママがねるまえにおこめのスイッチをいれていることをおもいだしました。
「ごはんをつくるきかいさん、おはよう!きょうは、アンちゃんのほうがはやおきね」
アンちゃんは、とくいげにすいはんきにあいさつしました。すいはんきは、ゆげをだしておへんじしました。

朝がこなくなっちゃうの?

なんとなくそとがあかるくなったきがしたのでアンちゃんはまどのそとをみてみました。いつのまにか、まっくらだったおそらがとてもきれいなオレンジ色になっていました。
「クマちゃん、みて。おそらがゆうやけになってるよ。いまは朝のはずなのに、ゆうやけになってるってことは、今からまた夜になるのかしら」

アンちゃんはなんだかとてもふあんになってこわくなってきました。

するとうしろから

「アンちゃんおはよう。とってもはやおきで、びっくりしちゃった」

というママのこえがきこえました。アンちゃんは、あんしんしたのと、でもまだちょっぴりこわいのとで、ママにだきついてなきました。
「ママ、おそらがゆうやけなの。アンちゃん、朝だと思っておきたのに、まだまっくらで、それから今、ゆうやけになって、朝にならないの。広島に、朝がこなくなっちゃうの?」
「かわいいアンちゃん、だいじょうぶよ」
ママがやさしくアンちゃんのあたまをなでながらこたえました。
「あれはね、あさやけ、っていうの。お日さまがのぼって、朝がくるときも、ゆうやけみたいなおそらの色になるのよ」
ママはまどの外をうっとりとながめました。
「朝やけなんてずいぶん見てなかったわ。アンちゃんのおかげで見られたわね。ありがとう」
アンちゃんもママにギュッとだきついて、朝やけをながめました。オレンジとあお色がまざったおそらは、アンちゃんが今までみたことのないおそらでした。

「なんだか、さわがしいから目がさめちゃったよ」
パパがあくびをしながらやってきて、アンちゃんのほっぺにキスをしていいました。
「はやおきアンこ、おはよう」

アンちゃんはパパとママをじゅんばんにみながら、いいました。

「パパ、ママ、おはよう。でも、アンちゃん、とってもはやくおきたから、またねむくなっちゃった」

ママはやさしくわらっていいました。

「きょうはどようびだから、もういちどねむっていいわよ。おやすみ、アンちゃん」

担当ライター

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